日中技術翻訳では、専門用語だけでなく、日常的に見える表現が問題になることがあります。特にマニュアル、仕様書、SDS、作業手順書では、短い助詞や条件表現が、操作順序や安全判断に影響します。

「必ず」

「必ず」は、単なる強調ではなく、作業者に義務を示す場合があります。中国語では文脈に応じて「必须」「务必」などを検討しますが、柔らかく訳しすぎると、推奨事項のように読まれることがあります。

例:「作業前に必ず主電源を切ってください」では、「作業前」「必ず」「主電源」の3点を落とさないことが重要です。

「〜するおそれがあります」

この表現は、危険・故障・品質不良などの可能性を示します。中国語では「可能导致」「有……的风险」などが候補になりますが、結果が何かを明確にする必要があります。「問題が起きるかもしれない」とぼかすと、安全情報として弱くなります。

「以上」「以下」「未満」「超える」

数値条件は、翻訳ミスが見た目で分かりにくい部分です。「以上」「以下」は境界値を含みますが、「未満」「超える」は含みません。中国語へ訳す際も、境界値を含むかどうかを確認する必要があります。

  • 10℃以上:10℃を含む
  • 10℃を超える:10℃を含まない
  • 5mm以下:5mmを含む
  • 5mm未満:5mmを含まない

「〜の場合」

「〜の場合」は、条件の範囲が広い表現です。前の文だけにかかるのか、後ろの複数手順にかかるのかを確認する必要があります。AI翻訳では、条件の範囲が自然な文に整理され、原文より狭くまたは広く見えることがあります。

「〜まで」

「完了するまで」「ランプが消えるまで」「温度が下がるまで」などは、操作を開始してよいタイミングに関わります。中国語では、時間的な終了点なのか、範囲の上限なのかを区別して訳す必要があります。

「確認してください」

「確認してください」は簡単に見えますが、何を確認するのか、目視なのか測定なのか、記録が必要なのかで訳し方が変わります。マニュアルでは、対象物、方法、判断基準が近くに書かれているかも確認します。

こうした表現は、辞書だけで正解が決まるものではありません。文書の用途、読み手、製品リスク、既存訳文を見ながら、訳語と文体を決めることが大切です。

日中技術翻訳の表現で迷う場合

マニュアル、仕様書、SDSの表現を、用途と読み手に合わせて確認します。

技術文書翻訳を見る実務ノート一覧